2025/07/31
乳がんの早期発見を!自己検診やセルフチェックで自分を守る方法を解説

目次
乳がんの罹患率
乳がんは現在、日本人女性がかかるがんの中で最も多く、国立がん研究センターの統計によると年間約9万人以上が新たに診断されています。統計によれば、生涯罹患リスクは女性の約9人に1人とされており、近年その数は増加傾向にあります。特に40代から60代の女性に多く見られますが、30代でも罹患する事例があり、若年層での発症も報告されています。
日本人女性の乳がん罹患率は、国の統計によると1975年から2015年の間に約4倍に増加しました。この増加の背景には、食生活の欧米化、初産年齢の高齢化、出産数の減少といった生活習慣や社会環境の変化が影響している可能性が指摘されています。また、乳がん検診の普及により発見される症例が増えたことも一因と考えられています。
地域別に見ると、都市部での罹患率が高い傾向があるとの報告があります。これは生活様式や検診受診率の違いが関係していることが示唆されています。また、乳がんの罹患率は年齢とともに上昇し、閉経後も高い水準を維持することが特徴とされています。
ちなみに男性の乳がんは女性の約1%程度と稀ですが、発症の可能性があります。男性の場合も早期発見が重要となりますが、認知度が低いため発見が遅れる傾向があるとされています。
遺伝的要因も乳がんの発症に関連しており、BRCA1やBRCA2といった遺伝子の変異を持つ場合、乳がん発症リスクが高まることが研究により示されています。家族に乳がんや卵巣がんの既往がある場合は、医師に相談することが推奨されます。

早期発見の重要性
乳がんの早期発見は、治療の選択肢を広げ、生存率の向上につながる重要な要素です。国立がん研究センターの統計によると、ステージ1(初期段階)で発見された乳がんの5年相対生存率は約100%近くに達するとされていますが、ステージ4(進行段階)では約30%程度となるというデータがあります。このようなデータからも、早期発見の重要性が示唆されています。
早期発見により期待できる利点としては、より侵襲の少ない治療法を選択できる可能性が高まることが挙げられます。がんが小さく局所にとどまっている場合、乳房温存手術という乳房の形状をできるだけ残す手術が検討される場合があります。また、リンパ節転移がない場合は、リンパ節郭清(切除)を省略できる可能性もあります。これにより手術後の機能障害やQOL(生活の質)の低下を軽減できる可能性があります。

また、早期の乳がんでは化学療法が不要となる場合もあり、治療による副作用の軽減も期待できるとされています。治療期間の短縮や医療費の軽減といった経済的側面も考えられます。
乳がんの早期発見に役立つ方法の一つが定期的な検診です。厚生労働省の調査によると、日本における乳がん検診の受診率は約40%程度で、欧米諸国の70〜80%と比較して低い水準にとどまっているとされています。特に30代、40代の若い世代での受診率が低い傾向があるとの報告があります。
早期発見の鍵となるのは、「しこり」をはじめとする乳がんの初期変化に気づくことです。乳がんの多くは、自覚症状がない段階で発見されることが望ましいとされていますが、自己検診によって変化に気づくことも大切です。早期の乳がんでは、比較的小さなしこりとして触知される場合があります。このような変化に早く気づくことができれば、医療機関を受診し、適切な検査・診断につながる可能性があります。
セルフチェック方法
乳がんの自己検診は、月に1回、定期的に行うことが一般的に推奨されています。閉経前の女性は生理終了後3〜5日頃に、閉経後の女性は毎月同じ日(例えば月初め)に行うことで習慣化しやすいとされています。以下に一般的なセルフチェックの方法を紹介します。

視診(見て確認する)
姿勢を変えながら確認する
- 鏡の前に立ち、まずは両腕を自然に下げた状態で乳房を観察します。
- 次に両手を腰に当て、胸を張った姿勢で観察します。
- 最後に両腕を頭上に挙げた状態で観察します。
チェックポイント
- 乳房の大きさや形に左右差がないか
- 皮膚のくぼみやひきつれがないか
- 乳頭の向きや高さに左右差がないか
- 乳頭からの分泌物がないか
- 乳房や脇の下の皮膚に赤みや腫れ、皮膚の変化がないか
触診(触って確認する)
仰向けで行う方法
- ベッドや布団に仰向けに寝て、検査する側の肩の下に薄い枕などを敷きます。
- 検査する側の腕を頭の後ろに挙げた状態にします。
- 反対側の手の指の腹を使って、乳房全体を丁寧に触っていきます。
触診のパターン
- 「時計回り法」:乳頭を中心に、時計の文字盤のように円を描くように触れていきます。外側から内側に向かって徐々に小さな円を描くようにします。
- 「扇型法」:乳頭を中心に、扇のように放射状に触れていきます。
- 「区画法」:乳房を4つの区画に分けて、順番に触れていきます。
しこりなどの変化を確認するポイント
- 硬さ:しこりは通常、周囲の組織と異なる硬さを持つことがあります。
- 大きさ:しこりのサイズを確認します。
- 形状:形状や境界の特徴を確認します。
- 感覚:痛みの有無などを確認します。
脇の下のリンパ節も確認
- 腕を少し挙げた状態で、脇の下にあるリンパ節の腫れや硬さがないかを確認します。
- 鎖骨の上下や首の付け根にあるリンパ節も触れて確認します。
入浴時のセルフチェック
- 石けんやボディソープを使って滑りをよくした状態で行うと、乳房の状態を確認しやすくなります。入浴習慣に組み込むことで継続しやすいという利点もあります。
- 乳頭からの分泌物のチェック
- 乳頭を親指と人差し指で軽く挟み、絞るようにして分泌物が出ないか確認します。分泌物がある場合は医療機関での相談が推奨されます。

セルフチェックで気をつけるポイント
- 乳房の状態は生理周期によって変化するため、同じタイミングで行うことが大切です。
- 自己検診で「しこり」などの変化を見つけても、それが必ずしもがんとは限りません。良性の変化(線維腺腫や乳腺症など)の可能性もありますので、判断は医師にご相談ください。
- 自己検診で異常がなくても安心せず、定期的な医療機関での検診も受けることが推奨されています。
自己検診以外のチェック方法
自己検診に加えて、医療機関で行われる以下の検査方法も乳がんの早期発見に役立つとされています。
マンモグラフィ検査
マンモグラフィは乳房を挟んでX線撮影を行う検査です。視触診では見つけにくい小さな変化や、微細な石灰化も検出できる可能性があります。
- 対象年齢:厚生労働省の指針では40歳以上の女性に2年に1回の受診が推奨されています。若年層では乳腺密度が高いため、画像評価が難しい場合があります。
- 特徴:微小な変化の検出に有用とされています。
- 注意点:乳房を挟む際の圧迫感を感じる方もいます。放射線被ばくについては、検査で使用される線量は微量であり、医学的に必要と判断された場合は検査のメリットがリスクを上回るとされています。

超音波検査(エコー)
超音波を使って乳房内部の状態を観察する検査です。痛みがなく、放射線被ばくの心配がない特徴があります。
- 対象:特に若い女性や、マンモグラフィでは評価が難しい高濃度乳房の方に有用とされています。
- 特徴:しこりの性状評価に役立つ場合があります。マンモグラフィと組み合わせることで検出能が向上する可能性があります。
- 注意点:石灰化の検出には限界があるとされています。また、検査者の技術や経験によって結果が左右される可能性があります。
MRI検査
強力な磁気を使って詳細な画像を得る検査です。
- 対象:主に乳がんの高リスク群(家族歴がある方など)や、他の検査で判断が難しい場合に検討されることがあります。
- 特徴:腫瘍の血流評価や、広がり診断に優れているとされています。
- 注意点:検査費用が比較的高額で、健診では一般的に行われません。閉所恐怖症の方は検査が困難な場合があります。
遺伝子検査
BRCA1/BRCA2などの乳がん関連遺伝子の変異を調べる検査です。
- 対象:若年性乳がんの家族歴がある、卵巣がんや男性乳がんの家族歴があるなど、遺伝性乳がんが疑われる場合に医師と相談の上、検討されることがあります。
- 特徴:リスク評価に役立つ可能性があります。
- 注意点:検査前後の遺伝カウンセリングが重要とされています。検査結果の解釈には専門的な知識が必要です。

臨床乳房検査(医師による視触診)
医師が視診と触診を行い、乳房の状態を調べる検査です。
- 特徴:医師による専門的な診察で、自己検診では気づきにくい変化を発見できる可能性があります。
- 注意点:単独での検診の有効性については様々な見解があり、現在は他の検査方法と組み合わせて行われることが多いとされています。
検診の受診間隔と組み合わせ
- 40歳未満:検診方法については医師にご相談ください。
- 40歳以上:厚生労働省の指針では、マンモグラフィによる2年に1回の乳がん検診が推奨されています。
- 高リスク群:検診間隔や検査の組み合わせについては、医師の指導を受けることが推奨されています。
各自治体によって乳がん検診の内容や間隔が異なる場合がありますので、お住まいの地域の情報をご確認ください。
まとめ

乳がんは日本人女性に最も多いがんと考えられており、統計によれば女性の約9人に1人が生涯で罹患するとされています。しかし、早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、予後の改善につながる可能性があります。統計データによると、早期のステージで発見された乳がんの5年相対生存率は非常に高いとされています。
自己検診は乳がんの早期発見に役立つ方法の一つです。月に1回、定期的に視診と触診を行うことで、乳房の変化に気づくことができる可能性があります。
しかし、自己検診だけでは発見できない場合もあります。医療機関で行われるマンモグラフィや超音波検査などの検診と組み合わせることで、より効果的に乳がんの早期発見につながる可能性があります。40歳以上の女性には、2年に1回の検診受診が推奨されています。
また、健康的な生活習慣の維持も大切です。適度な運動、バランスの取れた食生活、適正体重の維持、過度なアルコール摂取の制限、禁煙など、生活習慣の改善が健康維持に役立つとされています。
最後に、何らかの変化に気づいたら、自己判断せず、医療機関を受診して医師に相談することが大切です。セルフチェックの方法を理解し、定期的に行うことで、乳がんの早期発見・早期受診につなげましょう。
自分の健康は自分でも守ることができます。日常的なセルフチェックと定期的な検診で、乳がんから自分自身を守りましょう。